シェア

facebook twitter line

自然と私が完全に調和した瞬間

2021.09.04

Posted by haradarumiko

人間も自然の一部、宇宙からみたら地球の細胞の一つ、と頭ではわかっていたつもりでも、その時までは、それは上辺だけの感じでした。その時、とは、自然と完全に調和し一体化したその瞬間です。

それは、仕事で南の島を訪れ、数日滞在した時のことです。

日中、慣れない土地を移動しながら課せられた調査をなんとか仕上げた最終日の夜、出かける元気も本を読む気力もなくソファに沈んでいました。「あ~もう動けない。任務はなんとか全うできたけど、とにかく、疲れた~。」頭も空っぽになってだら~としていました。

滞在していたホテルは、フロントに海、背後に森が広がる自然豊かな立地でした。窓を全開にして夜風を入れていたら、バルコニーにポツポツと雨が落ちてきたようでした。

そのうち本格的に振りはじめ、南国の、湿気を含んだ空気を心地よく肌に感じ始めました。雨の匂いと音、呼吸に意識が向かい始めました。規則的ながらうつろう鼓動、そして虫の音、いろんな音とリズムが混じり合ってきました。本当は毎晩聴こえていたであろうカエルの大合唱も、よく聴くと、低くて太い声、高くて規則的な声、初めて聴くような声、何種類か聴き分けられました。「カエルの歌ってなんて癒されるのだろう」と感動を覚えた時、人生の中でとっても大事な、雷にうたれたような瞬間が突然訪れたのです。

言葉で言うとしたら「自然と生態系と私のリズムが完全に調和した」瞬間でした。

私はまぎれもなく自然の一部で、自然は世界そのものだとはっきり感じ、その調和したリズムの圧倒的な心地よさに包まれたのです。そして、大きな安心感の中で、心身にみるみるエネルギーが満ちていくのを感じました。

私はたまらなくなり、雨が少し降りこんでいるバルコニーに部屋の椅子を持っていって横一列に並べました。そしてそこに寝そべって、体全体をそのリズムに預けて最後の夜を過ごしました。瞑想とかマインドフルネスが流行する前のことでした。

自然が心地よいと思うのは、人間にもともと備わっている感覚だと思います。でも、それはなぜなのか?なぜ人は自然に癒されるのか?養老先生の言葉に納得はしても、人に説明することができませんでした。それが、その体験のあと、完全に納得できる説にたどり着いたのです。 (つづく)