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ウッドショックについて考えてみました。

2021.07.27

Posted by haradarumiko

輸入材がはいってこなくなったことで、国産材を含む建築用木材の価格が高騰し、供給が需要に追いつかない状態が続いているようです。この現象を1970年代のオイルショックになぞらえてウッドショックと呼び、林業に関係するプロジェクトの会議でも「いつまで?」「どうなってんだ?」と、住宅の建築になかなか着工できなかったり、工事中物件の引き渡しが遅れるおそれ、といった話が聞こえていました。

輸入材が入ってこないその理由の出発点には、コロナの影響があります。アメリカで、低金利もあって住宅建築需要が増え(もともとライフステージごとに住み替えが旺盛であるなど住宅との付き合い方が日本とは違いますよね)、木材需要が急増。アメリカから材が出てこない、その他から出ても中国が買ってしまう。加えて世界的なコンテナ不足、さらには投機目的でも買われてくる。こうした大きな流れの結果としての、日本のウッドショックです。

アメリカ・カナダからの輸入に頼っていたSPF材。ホームセンターなどで売られている木材です。(写真:photoAC)

「でも、山にはいっぱい木も生えてるし、輸入材が入ってこないなら今こそ国産木材増やせばいいのでは?」と思いますよね。日本は国土の約7割が森林で、先進国の中ではフィンランドに次ぐ世界2位の森林率なのですから。

ところが、国産木材は、今日明日すぐに供給を増やせるようなものではないんです。木を伐るには、山主さんと伐採事業者さんとの契約、現場の人や機材の確保、伐採届けなどの手続きが必要で、伐採後の製材、乾燥も、急に設備体制を変えられるものでもなく、木が建材になるまでには時間がかかります。

木の文化といわれる日本、もともと、おじいちゃんおばあちゃんあたりまでは国産の木材で家をたてていました。大工さんの技術がいきた民家、よいですよね〜。でも戦後の復興の中でたくさんの木材が必要になった時に、外国産材を安く輸入できるように関税が下げられ、木材の貿易自由化にいたりました。その後のプラザ合意もあって、「国産木材は高い」というイメージがつき、外国産材に席巻されて自給率も落ちるところまで落ちてしまったんです。そんな流れで、日本の木造住宅も、ほぼ関税がかからずに入ってくる安い外国産材が主要な材料となり、サプライチェーンも外国産材に依存したかたちで構築されています。安易な自由化がスイッチとなって、日本の林業の活力も衰え、働き手も多く流出してしまいました。

そんな日本に起こったウッドショック。この相場高がいつまで続くのか、様子を見ながらのようですが、少しずつ国産木材への代替の動きがみられたり、サプライチェーンが見直されたりもしているようです。ですが、これが「仕方なしに」だと、輸入材が戻った時にまた国産木材が採用されなくなるようにも思います。山の川上から、建築の川下まで、日本の、もっと小さな単位で地域の持続可能な資源や産業を思い描いて、根本から考え変わるチャンスの時にできないものでしょうか。日本の山には、望めば供給できる木材量が蓄積されつつあります。戦後の造林で植えられた木たちも、そのために出番を待っています。日本の林業に、担い手がいなくなってしまわないうちに、と思うのです。

木材に限らず、たんに「安いから」「早いから」「便利だから」という理由で、大きなサプライチェーンや外部に依存しきったり、あっちこっちから顔の見えないものを調達するばかりでは、危機や災害で、供給が途切れてしまいます。これは、東日本大震災、そしてコロナ禍でつくづく実感したことです。これからは、日頃から顔の見える関係をつくり、持続可能な地域の力を意識することがますます大事になってくるように思いますし、そうしたいです。